サザン豊田スタジアム(4)<ライブ当日②>

2013/09/08

道外旅行

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サザン豊田スタジアム(4)<ライブ当日②>

17:30、開演の時間が来た。雨は小雨が降ったり止んだりの状態。定刻にはスタートせず、待ちきれないファンがウエーブを始める。スタジアムの一体感にみんなテンションが高まる。そして待ちに待った5人の登場。舞台下からせりあがって登場したサザンのメンバーに、5年間待ちわびたファンから大歓声が沸き起こる。1曲目は「海」。事前にセットリストを知っていなかったらかなり驚きの選曲だったことだろう。ちなみに会場によっては「YaYa(あの時代を忘れない)」が1曲目だったところもあるようだ。「YaYa~」に関しては、5年前この曲でしばしの別れを告げただけに、時間をそこに戻して再スタートを切ったという意味もあるのだろう。「海」からの「My Foreplay Music」、そしていきなりテンションMAXの「勝手にシンドバッド」で会場は一気にヒートアップ。この頃には空も元気を取り戻し、雨は上がっていた。我々もレインコートとポンチョを脱ぎ捨ててノリノリに!娘も当然「今何時!?」のフレーズは練習済みである。

いつも通り3曲終了後のMC、昨年札幌で見た桑田佳祐ソロのライブでは、正直周りの客も年配の客が多く、演奏中もわりと座って聴く人の割合が目立っていたため、「さすがの桑田もファンが高年齢化してきたなぁ」という印象が強かったが、やはり「サザン」となると全然違う。大型スタジアムでのライブのため人数が多いことももちろんあるが、まさに老若男女という言葉がふさわしく、親に無理やり連れられた小さな子ども(我が娘含む)から10~20代の人もたくさんいた。そしてみんな終始オールスタンディング。後から聞いた話だが、このスタジアムはスタンド席が一部急こう配のため立ち見を禁止されたそうだが、みんなお構いなく立って盛り上がっていたそうだ。よく、サザンとソロの違いがよくわからんという意見を聞くが、違うのだ。ソロの楽曲はもちろんいいのだが、「サザン」というバンドの底深さ、懐の深さに皆が抱かれる気持ち、これぞサザンのライブだった。

「YOU」、「涙のキッス」ときてあまり近年のライブではお耳にかかれない「愛する女性とのすれ違い」も聴けた。「夏をあきらめて」を挟んで、今回のライブでの私の中でのベストプレイだったのが「タバコロードにセクシーばあちゃん」だった。歌詞は意味不明だが楽曲のカッコよさはピカイチ。ライブでは特に映える曲だ。いやはや、30年以上前の曲がここまでカッコいいのだからもう圧巻である。このライブであらためてこの曲の良さに気付いた人は多かったのではないだろうか。続いて「Moon Light Lover」。この曲を生ライブで聴いたのはもしかすると初めてかもしれない。このライブ後、娘はこの曲のサビのメロディラインが好きになったようで気に入って聴いている。「さよならベイビー」、「愛の言霊」が終わって、5年前にファンに預けた屋号を返還する儀式が行われた。サザンお得意の寒い小ネタで会場はほんわかした雰囲気に。ここで続いて新曲を2曲やります~という桑田のMCに続いて、原坊の「人生の散歩道」をあまちゃん風の紹介でスタート。動物のかぶりものをしたダンサーが出てくるなど、ほんわかした演出に娘も興味深々。そして娘がサザンで一番お気に入りの「栄光の男」だ。正直35周年の新曲については「ピースとハイライト」「蛍」について、若干残念な印象があったのだが、この「栄光の男」のおかげで残念さが一気に払しょくされた。サザンにしては詞も曲も渋いがこれがカッコイイ。今のサザンだからこそ奏でられる音、今回の復活に意味があったんだとファンを納得させる一曲だ。もちろん父娘は大盛り上がり。ここで前半のハイライトを迎える。


「栄光の男」が終わった後、トイレタイムを取ることはあらかじめセットリストを見て決めていた。子どもが小さいので適宜トイレタイムを挟む必要があり、ライブはこの後アコースティックコーナーと題し、「ラチエン通りのシスター」や「NEVER FALL IN LOVE AGAIN」という通好みの選曲が続くため、ここをトイレタイムとすることは往年のファンから怒られそうだが、ここは子どものため、やむを得ない。トイレ明けはアコースティックバージョンの「神の島遥か国」があり、ライブでは珍しい名曲「慕情」でしっとりさせたあと「太陽は罪な奴」で盛り上げる。その後はおなじみのライブ用イントロで始まる「Bye Bye My Love」。この歌、高校の時大好きだったなぁ。1曲1曲に思い出がよみがえる、そんな空間をここにいる大勢の人が共有している。普段あまり一体感とかいう言葉は好きではない。プロ野球は好きだがみんなで同じ振付で動く応援は興ざめだ。そんなひねくれ者でもサザンのライブだけは別。みんながサザンに酔いしれ、時には同じ振付、掛け声で騒ぐ。この一体感はたまらない。サザンは私の氷の心を溶かしてくれる数少ない存在なのだ。思い出に浸った後は私が世界で一番好きな曲「真夏の果実」。この歌の世界観は桑田佳祐にしか彩ることはできない。夏を「海だ!祭りだ!」と陽気に囃したてるだけでなく、ジメっとした、日本の夏が持つ「陰」の部分をここまで見事に歌にできる人はこの人しかいない。そしてこの人の「声」でなくてはこの歌は命を持たない。娘とかの地で聴く「真夏の果実」はひと際心にしみる。その後「Love affair」を挟んで「涙の海で抱かれたい」が流れる。25周年のこの曲をライブで聴くのはその年以来だ。続いて新曲の「蛍」。いい曲だとは思うがソロで出た「MUSICMAN」のラスト「月光の聖者達」と同様、イマイチ私の好みではない。ただ、「永遠の0」の映画主題歌ということなので、映画の出来次第ではでこの曲が流れるときっと涙が流れるだろう。映画にはきっとピッタリだと思うので、それを見たら考えが変わるかもしれない。そして「ピースとハイライト」。私たちの席の目の前の通路に何曲か前から大きなシートにくるまれた物体が運ばれて来ていたが、中身は白い風船。2013年、サザン復活を高らかに宣言したこの曲のファンファーレのようなイントロとともに大量の風船が空に解き放たれた。空に飛ぶ前の風船を取ろうと苦戦していると、隣の席にいた人が2つほど取ってくれて私たちに手渡してくれた。そんなちょっとした温かさに触れつつ、この曲からは怒涛のアップテンポナンバーが続く。「マチルダBABY」「ミス・ブランニュー・デイ」「みんなのうた」と、30周年から5年の時を経てパワーアップした「いつも通りのサザン」がそこにあった。「みんなのうた」では水がかかるかと期待したが惜しくも届かなかった。そしてラストナンバーはライブのタイトルにもなった「マンピーのG★スポット」だ。この日のハゲヅラは何とティッシュ。おでこからティッシュを次々と引っ張りだしながら歌う姿はまさに紙、ならぬ神。50代後半の国民的ミュージシャンが、ここまで突き抜けてくだらない下ネタをやり続ける、しかもそれが全く違和感もイヤらしさも感じない。もはや神以外の何者でもないと思う。曲中には巨大なマツタケとアワビの御神輿が登場、最後にはドッキングしてマツタケの先から白い煙がプシュー。会場のファンは誰もが思ったことだろう。「サザンが帰って来たんだ!」と。

アンコールは、21世紀のサザンを代表する名曲、「ロックンロール・スーパーマン」で始まり、「HOTEL PACIFIC」ではAKBに扮したダンサーがお色気たっぷりのダンスを披露。そして「いとしのエリー」。30周年の日産スタジアムの「エリー」は心が震えたが、今回もまた力のこもった熱唱だった。そしてラストナンバーは「希望の轍」。やはりこの曲を聴かなきゃサザンのライブじゃない。しかし今回は小さい子ども連れだったため、これがラストナンバーだと知っていた私はこの曲が始まると同時に席を立った。何セこの人数だ、最後までいたら規制退場がかかるに決まっている。そしたら一体何時に帰れるかわからないし、旅先なのでサザンのライブでは初めて、途中で席を立った。とはいえ会場を出るまでに曲はラストを迎えたので最後まで聴くことができた。


帰り道は長く感じる駅までの道を、二人手をつないでがんばって歩く。正直、7歳の子どもを連れてくることについて、周りから嫌な目で見られないか、子どもが果たして楽しめるのか、猛暑で子どもが無事でいられるか、背が小さくてまともに見られないんじゃないかなどいろいろな不安があった。しかし思いのほか涼しく、雨もギリギリのところでやんでくれた。ブロックの最前列だったため前に空間があり、小さな子どもでもわりと見えやすかったし基本的にはずっと抱っこしてあげた。念のため持っていった抱っこひもが功を奏し、非常に疲れたが幸せな時間だった。娘も大きくなってからこんなに長い時間抱っこされたことがないのですごく幸せだったようだ。そして何よりもうれしかったのが、子どもが楽しんでくれたことだ。どうせ途中で飽きてぐずるだろうと思い3DSなども持って行ったが、出番はなかった。ずっと興味を持って最後まで見てくれた。後からライブの話をしても、私が覚えていないようなことまで覚えていた(コーラスのタイガーさんの名前も覚えていた。)これをきっかけに彼女はサザンを気に入ってくれたらしく、以後も喜んで聴いている。もともと好奇心の旺盛で元気な子だが、本当に素晴らしい子だとあらためて誇りに思った。これだけ楽しんでくれたならお金を出して連れて行った甲斐があるというものだ。いろんな不安はすべて吹っ飛んだ。サザンとの再会と、夢だった娘とのライブで深まった絆、本当に最高のライブだった。帰りの電車で娘は「栄光の男」をイヤホンで聴きながら眠っていた。

ヘトヘトになってホテルに帰り、当日が誕生日だった娘のために買ったケーキを二人で食べる。母親や妹のいない誕生日を過ごさせて少しかわいそうだが、きっと二人で過ごす誕生日はこれで最後かもしれない。サザンの余韻に浸りながら、死ぬまで忘れることのないであろう大切な一日が終わった。


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